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掌蹠膿疱症の原因と治し方

1. 掌蹠膿疱症とはどんな病気か<症状・原因・どんなひとに起きやすいか>

1-1 掌蹠膿疱症の症状

掌蹠膿疱症とは、手のひらや足の裏にプツプツと小さなできものが繰り返しできる病気です。プツプツはどちらかというと、黄色や赤~茶色に色がついており、「膿疱(のうほう)」と呼ばれます。手のひら(掌)や足の裏(蹠)に膿疱ができる病気・・・ということで、掌蹠膿疱症という病名がついています。*1

*1 ,ヤンセンファーマ株式会社,2024年,掌蹠膿疱症ってどんな病気?,掌蹠膿疱症ネット,https://www.kansennet.jp/ppp/disease/symptoms.html,2025年1月30

よく間違われますが、中に水がはいっている水疱(すいほう・無色で肌の色のまま小さく盛り上がっています)とは異なります。

 膿疱の中に詰まっているのは、白血球の死骸です。掌蹠膿疱症は感染によるものではなく、細菌などはいませんが、膿疱の部分はあたかも細菌と戦ったあとのような状態になっているのです。これは全く奇妙なことです!

 膿疱は皮膚の奥にできるので、それが押し出され表面に出てくるとき、膿疱の周りの皮膚が剥けてしまうことがあります。また、膿疱ができ、皮膚が剥けてを繰り返すうちに、手のひらや足の裏の皮膚が硬くなったり、硬くなった皮膚が割れ(亀裂)たり、ひどくなると痛みを伴うことも。

 また、掌蹠膿疱症が悪化すると、手足以外のところにも赤いプツプツ(丘疹)が広がったり、関節や胸骨や鎖骨に痛みが出ることもあります。

 「手足にプツプツができるだけ・・・」と油断していると、思わぬところに不調が広がることがあるので注意が必要です。

1-2 掌蹠膿疱症の原因

いわゆる現代医学、皮膚科の世界では、掌蹠膿疱症の原因は分かっていません。
 
 ただ、掌蹠膿疱症を発症する患者さんには「中年が多い」こと、「タバコを吸うひと」や「金属アレルギーのあるひと」「身体のどこかに長引く炎症があるひと」が見られることから、何らかの免疫のバランス失調が関わっていると推測されています。*²
 
 が、禁煙したり、歯科の詰め物などの金属製品を取り除いたり、炎症部位の治療をしたりしても治らない場合があり、どうやら単一の原因によって起こる単純な病気ではないようです。

*2 橋本喜夫ほか,2006年,旭川医科大学最近17年間の掌蹠膿疱症の統計,臨床皮膚科,p333

1-3 どんなひとに起きやすいか

年齢的には40代以降が多い傾向にあります。喫煙や金属アレルギーが関わることもありますが、全員ではありません。*³ 慢性的なのどの炎症が続いている(扁桃腺炎)、虫歯を放置しているなど、慢性的な炎症が関係している場合もありますが、こちらも当てはまらない場合はよくあります。

 中年に多いということは、長年の生活習慣や加齢のため腸内細菌叢が乱れ、本来腸内細菌が作り出すビタミンなどが不足して、皮膚の健康を維持できなくなっているのではないかとの考えもあります。  
 この仮説に基づき腸内細菌が作ってくれるビタミンの一種「ビオチン」を補充する内服療法が試みられています。*⁴ こちらも、内服して改善してくるひともいますが、全員に効果があるとは言えない状態のようです。
 
 このほか、ストレスや過労が悪化の引き金になっているケースもあるようです。
 実際にわたしの出会ってきたみなさんでは、食生活、とくに飲酒によって悪化するひとがとても多かったです。

*3 清水宏,2011年,新しい皮膚科学第2版,株式会社中山書店,p248
*4 照井正ほか,2022年,掌蹠膿疱症診療の手引き2022,日本皮膚科学会誌132号,p2097

2. 現代医学の掌蹠膿疱症治療 「治ったひと」はなかなかいない?

 このように、原因が特定できず、発症するひとのタイプもさまざまなため、「これをやれば、治る!」という決定的な治療法はまだ確立していません。

 現在病院で行われている治療法としては、

○長期喫煙者は、禁煙する
○慢性的な炎症が続いている部分(感染病巣)のある場合は、 そこを治療(扁桃腺炎、虫歯など)
○外用薬(ステロイド、ビタミンD₃)を患部に塗る
○PUVA療法(紫外線に反応しやすくなる薬剤を塗布して紫外線を当てる)

があります。*5

 また、急性増悪時には、ビタミンA製剤や免疫抑制剤などの内服が行われる場合もあります。最近では、トレムフィア®、スキリージ®といった免疫反応を活発化させる物質(インターロイキン)の働きを阻害する生物学的製剤が実用化されています。*¹ 

 症状を抑えるための方法は種類が増えました。が、治療の必要がなくなるまでに「治った」状態にするのは、依然として難しいようです。 

*5 照井正ほか,2022年,掌蹠膿疱症診療の手引き2022,日本皮膚科学会誌132号,p2087-2106

では、掌蹠膿疱症に対して、効果的な方法はないのでしょうか。
 いえ、あります。漢方薬を効果的に使用する「中医学」の方法です。
 次の章では、現代医学(皮膚科)の治療ではない、別の角度からの掌蹠膿疱症対策について解説していきます。

3.掌蹠膿疱症という病気を中医学ではどう見るか

 中医学では、掌蹠膿疱症という病気は、以下のように考えています。*6

<図表>

解説します。 

 感染やタバコの吸いすぎ、アレルギーなど、自身の免疫反応を揺らがせる影響があることを総称して「外邪」と言います。外邪によって、体内の免疫反応は亢進させられます(「熱」)が、体内に溜まった老廃物(湿)と合体すると「湿熱」が、熱が勢いが増し組織を攻撃、傷つける力を持つようになると「毒邪」が、それぞれ引き起こされます。 

 本来自身の回復力によってそうした邪気(病気を引き起こす力の総称)は取り除かれるべきです。ところが、自身の回復力を支える「気(パワー)」や「血(材料)」が不足していると、充分に毒邪を取り除くことができず皮膚に停滞します。 

 停滞した湿熱や毒邪がついに皮膚に症状となって現れ、膿疱を形成するまでに増長してしまうと、ついに掌蹠膿疱症を発症すると考えています。 

 大枠で解説すると以上になりますが、実際にどの邪気(病気を構成する要素)がどのくらいの割合で存在するか、病気と戦う力(気血など)がどれくらいあるか、さらに先の図には描いていませんがその背景に、そもそもの免疫がどのくらい揺らぎやすいか(陰陽バランス)などもともとの体質に課題のあるひともいます。状況はひとりひとり異なり、生活やストレス、季節などによっても刻々と変化していきます。  

*6楊達,楊暁波,2020年,[簡明]皮膚疾患の注意治療,東洋学術出版社,p172-173

4.掌蹠膿疱症の中医学治療と効果 

 3で見たように、ひと口に掌蹠膿疱症と言っても、邪気の種類や強さ、気血や陰陽のバランスはひとりひとり個別に異なります。 
 そこで、中医学で治療する場合は、個別に邪気の種類や割合を分析し、それに適したお手当を組み立てます。 

 膿疱が次々と出てくる段階では、湿熱と熱邪の勢いが強くなっていることが多いです。 湿熱の存在感が大きいときは、萆解(ひかい)や竜胆草(りゅうたんそう)、沢瀉(たくしゃ)といった熱をクールダウンしながら余分な湿(老廃物)を尿として排泄する働きのある生薬を中心とした処方を用います。
 毒邪の存在が大きいときには、さらに五味消毒飲など解毒の効のある処方を組み入れます。
 膿疱が出てくる勢いや弱まっているのに健常な皮膚への回復が遅いとき、また、消化しやすく胃腸に負担のかからない食べものを選んでいるのに湿(老廃物)ができ続けるときなどは、気血が不足していると考えます。この場合は、気血を補う黄耆や当帰などを活用します。

 過剰な「熱」が長引く場合は、「陰」が弱まって「陽」を制しきれなくなっていることを考慮し、女貞子や旱蓮草といったクールダウンの性質のある薬草を加えたりと調節します。 

 また、上記の方法で炎症が鎮まって皮膚の赤み(紅斑)が取れ、膿疱のサイズが小さくなり次第に膿疱自体があまりできなくなってきたら、次の段階へ移ります。繰り返し膿疱ができて皮膚がゴワゴワと厚くなってしまった部分(苔癬化)を、ツヤがあってなめらかな本来の皮膚へ修復する段階です。この段階では、活血化瘀(かっけつかお)を行うと、スムーズに修復が進みます。 *6*7

 一般的に、「『掌蹠膿疱症』には『十味敗毒湯』」といった「病名から漢方処方を選ぶ」方法が取られるようですが、中医学ではこの方法を採用しません。これだと漢方薬の本来の効果を引き出せないばかりか、かえって悪化させてしまうこともあります。ひとりひとり、今の状態を分析して、状態に合ったものを選択・組み合わせることが必要です。 

*7 中医研究院主編,1985年,中医症状鑑別診断学第1版,人民衛生出版社,p499-500 

5.掌蹠膿疱症 やってはいけないこと 

 掌蹠膿疱症を改善しようとする方が「やってはいけないこと」をご紹介します。
4つあります。順に解説していきます。

5-1 膿疱を潰さない

 一つ目:「膿疱を潰さない」ことです。最後は表面に出てきた皮膚が剥けますので、ほじって潰してしまえば早く治るように感じたりしますよね。
ですが、これは大きな間違い!
自分で潰しても回復は変わらないどころか、雑菌が入って別の病気を作ってしまうこともあります。
くれぐれも、自分で潰したりしないようにお願いいたします。
 
 また、膿疱が表面に出てきて皮膚が大きく剥けてしまうと、めくれた輪郭が気になって、自分でめくって剥がしたくなるものです。手のひらや足の裏の皮膚は厚く、予想よりも深く剥けたり、皮膚の構造が壊れて「びらん」になったりすると、とても痛く辛いです。めくったり剥がしたりもやめましょう。

5-2 タバコは止める

 二つ目:喫煙です。長くタバコを吸っていた方に多い病気なのは間違いありません。もしあなたがタバコを吸う方だったら、なるべく早く禁煙することをお勧めします。

5-3 睡眠不足しない

 三つ目:睡眠不足です。睡眠が足りないと免疫も揺らぎますし、皮膚の修復スピードも落ちます。くれぐれも、「早く」ふとんに入るように、生活を見直しましょう。できれば10時までに就寝できるとかなり回復します。寝る時間を早めると新たな膿疱が激減した方もいました。

5-4 悪化しやすい飲食物を避ける

 四つ目:飲酒を始めとする、悪化しやすい飲食物です。お酒を飲むと膿疱ができる方、とても多いです。
 お酒のほかには、チーズやチョコレート、クリーム、肉の脂身など、油分を含んでベトベトしたものも悪化要因となります。こうした食べ物は中医学では、「(じ、ベトベト・ネバネバの意味)」と呼び、消化しにくいため老廃物(湿)のからんだ不調を悪化させることが知られています。

 以上の四つは膿疱が出なくなるまで、やってはいけないことです。この中でもタバコは、膿疱が出なくなっても解禁せず、そのままやめていただくのが効果的です。

6. まとめ 掌蹠膿疱症を治すために 

 現代医学(皮膚科)の治療法は新しいものが次々出て、できることがかなり増えました。ですが、真面目に治療を受けてもなかなか……という方が多いのも事実です。

もし、思ったほどの改善が見られなかったら、そのときは中医学によるお手当をお勧めしたいです。

 中医学では、掌蹠膿疱症の起こる仕組みと治し方が解明されています。実際に、わたしたちまつもと漢方堂でも、手も足ももう何も出なくなり、しなやかでツヤのあるキレイな皮膚を取り戻した方が何名も出ています。

ぜひあなたも、中医学的なお身体の状態チェックをしてみて下さいね。
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